石屋のないしょ話 vol.148

一年過ぎるのは早いもので、もう十二月です。 皆さんた風邪などひかないように気をつけてください。 今月は「二枚舌」についてお話しします。
小さいとき「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」と両親に言われた経験がある方は多いと思います。 「閻魔様に舌を抜かれる」というのは、この「二枚舌」からきたようです。 「二枚舌」のいっぽうを抜くことで、一枚だけの健全な舌に戻しましょう、ということだったのでしょうか? 一枚しかない舌を釘抜きのような怖い道具で抜き取ってやろう、などと脅すつもりは閻魔様にはなかったのかもしれません。 このように閻魔様が登場するのは「二枚舌」がそもそも仏教用語を語源としているからです。 今、一般に使われている「二枚舌」の意味を調べると「嘘をつくこと」と出ていますが、単なる嘘つきというよりは、あっちではこう言い、こっちではこう言うといったあちらこちらで矛盾したことを平気でいうような嘘のつき方です。


しかし、もともとの仏教用語には、嘘をつくという意味はなかったのだそうです。 「二枚舌」はサンスクリット語を訳した言葉で、仏教では「両舌
りょうぜつ」ともいわれています。 そして、これは仏教でいわれる十悪業のひとつで、二人の人にそれぞれ別のことをいい、その結果、二人の仲を裂くことを意味するそうです。 つまり、悪口や陰口をコソコソ言うのも「二枚舌」という十悪業のうちなのです。 「嘘をつくと閻魔様に舌をぬかれますよ」ではなく、「悪口をいうと閻魔様に舌を抜かれますよ」にすべきだったのかもしれませんね。


ところで、仏教の十悪業には「二枚舌」と別に「悪口」というのもあります。 現在使われている「悪口」という言葉は、仏教でいえば「二枚舌」のことです。 では、仏教でいう「悪口」とは何を指すのでしょうか? これは、「わるくち」ではなく「あっく」と読みます。 直接、相手に向かって悪い言葉を吐き、人を傷つける行為をいうのだそうです。 そういえば、「悪口祭」を「あくたれ祭」とか「あっこう祭」と呼びますね。 これはかつて八坂神社でも大晦日の除夜祭として行われていたもので、この種の祭りは全国に見られます。 暗闇の中、すれちがう見知らぬ他人同士が互いに悪口を言い合い、ののしり合い、言い負かしたほうが勝ちだとか。 新年の縁起をかついで悪口を言い合うというユニークな祭りです。
石屋のないしょ話でした・・・。