石屋のないしょ話 vol.175

3月3日はひな祭りです。 ひな祭りに用意されるごちそうは、赤飯・ばら寿司・ちらし寿司など“主食”は地方や各家庭によってさまざまですが、汁物の具には必ずといっていいほど「はまぐり」が用いられます。 今月は「ひな祭りのはまぐり」についてお話します。

女の子の祭りの日にはまぐりを食べるのは、その貝殻が他のはまぐりとは絶対に合わないという理由からです。 そこから、はまぐりは女性の貞操のシンボルとされ、将来いい伴侶が見つかりますようにという願いを込めて食膳に並ぶようになりました。

しかし、あさりにせよ、しじみにせよ、貝の形はそれぞれに違います。 対になっている貝殻以外に本当にぴったりと合う貝殻は見つからないはずです。 それなのに、はまぐりだけが「はかの貝とは絶対に合わない」という理由でひな祭りに食べられるようになったのはなぜなのでしょう?

その答えは、一つにはちょうどその時期にはまぐりが旬を迎えるからでしょう。 加えて、はまぐりの貝殻は『源氏物語』の時代から「貝合わせ」という遊びや、女性の化粧品である紅の入れ物としても用いられていました。 しかもはまぐりは身も美味しく、あさりやしじみに比べると値段もはる高級貝です。 

こうした感覚は、昔の人にも共通していたようで、女の子の幸せを託すにははまぐりの“高級感”が必要だったのでしょう。 

ちなみに、はまぐりのお吸い物を美味しく作るには、水から煮るのがポイントです。 他の出汁を入れるとはまぐり本来の風味が損なわれてしまいます。 味付けは、薄口しょうゆと塩少々のみで、ほんのり上品に仕上げてください。

石屋のないしょ話でした・・・。