石屋のないしょ話 vol.19

日中は暖かい日も増えてきて、春が待ち遠しい今日この頃です。 気候が良くなってくると、散歩に出かけられる方も多いのではないでしょうか? さて、今月は昔ながらの町並みを歩いていると目にする、「鐘馗しょうきさん」についてお話します。
京都の中京や西陣など昔ながらの町並みを歩いていると、町家の屋根瓦の上に瓦人形が置いてあるのをよく見かけます。 この瓦人形は「鐘馗しょうきさん」と呼ばれており、姿や形は様々ですが、二〜三十センチ程の高さで、右手に太刀を持ち、前方をにらみつけています。 なぜ屋根の上に「鐘馗さん」を置くようになったのでしょうか? むかしむかし三条のあたりに薬屋さんが大きな家を建てたそうです。 その屋根に大きな鬼瓦を置いたところ、その瓦を見た向かいの家に住む娘さんが、その鬼に睨まれているような気がして毎晩うなされ、ついには病気になって寝込んでしまったそうです。 心配した両親はあれこれ手を尽くしましたが一向に良くならないため、向かいの薬屋さんに鬼瓦を取り外してくれるようにお願いしましたが、大金を払って苦心して取り付けた鬼瓦だから外せないといわれたそうです。 そこで鬼に勝つものは何かと考え、「鐘馗さん」ならということで「鐘馗さん」の形をした瓦を瓦屋さんに作らせたのだそうです。 
「鐘馗さん」とは、そのむかし唐の玄宗皇帝が病に伏した時に、夢の中で鬼が楊貴妃の宝物を盗もうとしたところ、そこに出てきてその鬼を退治した伝説の人物です。 寝込んだ娘さんの両親がその物語にならって「鐘馗さん」を鬼瓦に向けて置いたところ、娘さんの病気はすっかり治ったそうです。 これが「鐘馗さん」を屋根の上に置くようになった云われです。 もちろん鬼瓦も魔除けなのですから、「鐘馗さん」はこの鬼瓦に対して二重の防衛として創られたことになります。 
しかし現在では向かいの家の鬼瓦に対抗しているわけではなく、自分の家にふりかかる邪気から守るために取り付けられているのです。  ちなみに鬼門に植えられる南天や桃の木なども、これと同じ意味があります。 
石屋のないしょ話でした・・・。