石屋のないしょ話 vol.98

四季折々の風景が愛でられてきたのが、市中を流れる鴨川です。 平安京の昔から、千二百年以上も京都の歴史を見つめてきた川です。 今月は、そんな鴨川の不思議についてお話します。 
実は、「鴨川」と「賀茂川」の二つの名前が混在しているのです。 鴨川を上流へ進むと、出町柳という場所で二方向から流れてくる川が合流しています。 北に向かって右側の川が「高野川」、左側が「賀茂川」で、この合流点にかかる大きな橋の名前は「賀茂大橋」です。 ときには「加茂大橋」「加茂川」と表記される場合もあります。 つまり、出町柳の合流点より上流が「賀茂(加茂)川」で、下流が「鴨川」なのです。 一九六五(昭和四十)年、河川法によってすべてを「鴨川」で統一しているのですが、現地では、上賀茂神社・下鴨神社など「賀茂」「鴨」の名前が使われ続けています。 昔、この流域一帯は、古代に大和から移ってきた豪族賀茂氏の勢力地でした。 上賀茂神社と下鴨神社は賀茂氏の氏神にあたります。 上賀茂神社の正式名称は「賀茂別雷神社かもわけいかづちじんじゃ」、下鴨神社の正式名称は「賀茂御祖神社かもみおやじんじゃ」で、もともとは合わせて「賀茂社」と総称されていました。 かつては下鴨神社も下賀茂神社と書かれていたようで、事実、中世の文献には下賀茂神社と記述されています。
全国には賀茂社の末社が約千社ありますが、それら末社の名前も「賀茂」「加茂」「鴨」と様々な通称が使われていたそうです。 それがいつの間にかそのまま定着したため、様々な漢字による「かも」の表記が生まれてしまったのです。 京都でも、神社名にならって、上流の上賀茂神社の近くは「賀茂川」または「加茂川」、下流の下鴨神社近くは鴨川と表記するようになったようです。 
石屋のないしょ話でした・・・。