仏事Q&A
其の五十一


Q. お坊様の呼び方を教えて下さい。

A. 檀家の方が菩提寺の住職を呼ぶ場合は、宗派に関係なく「ご住職」「おしょうさん」と呼ぶのが一般的ですが、日蓮宗では「お上人」と呼ぶ場合も多いようです。 土地の習慣で「旦那」などと呼びならわしているところもありますが、「旦那」の語の意味は、インドの「ダーナ」からきたもので、施しをする人という意味があります。 確かにお坊様は「法施」という仏様の教えを施す(伝える)ということをしているわけで、「旦那」と呼ぶのは間違いだとは言い切れませんが、あまりふさわしい呼び方とはいえません。
「方丈」とは、一丈四方の室ということで、お坊様の長老や住持(職)の居住するところを指して言います。 一丈四方は四畳半ぐらいの大きさですが、現実にはこんな狭い住居ばかりではありません。
これは、大乗仏教のあり方を簡明に示している『維摩経』の主人公・維摩居士の居室が一丈四方であったところから、その名が生まれてきました。 そして、そこに住まっている人という意味で、住職のことを「方丈さん」と呼ぶようになりましたが、これは主に禅宗系のお坊様に使います。 「和尚」は、普通「おしょう」と読みますが、華厳宗・天台宗では「かしょう」、真言宗・律宗・法相宗では「わじょう」と読んで、「おしょう」は禅宗や浄土真宗です。 「和尚」は、親教師という意味の梵語からきた言葉で、大衆の師である高徳の僧という意味ですが、我が国でははじめお坊様の官名となって、朝廷から授けられました。
中国から渡ってきた有名な奈良・唐招提寺の鑑真に、孝謙天皇から「法務大和尚位」が授けられたのがはじまりで、後になって「法橋上人位」(律師)、「法眼和上位」(僧都)、「法印大和尚位」(僧正)の僧位三階が制定されました(貞観六年=八六四年)。 それ以後、高僧の尊称に使われ、ことにお弟子がお師匠さんを呼ぶ時に用いられています。 現在ではこれが一般に使われているのですが、禅宗や浄土宗系では、住職や僧侶として人々の指導にあたる人の法名に「和尚」「老和尚」「大和尚」の尊称をつけるようになっています。
「上人」は、やはり知徳に優れたお坊様への敬称なのですが、『増一阿含宗』には「人の世に処し、過あらばよく自ら改たむる者、これを上人と名づく」、また『大品般若経』に「一心に阿耨多羅三藐三菩提を行じて心散乱しない、これを上人と名づく」とあります。 仏の教えを求め一心に修行にはげみ、自らに厳しく謙虚であって、人々に尊敬される人を「上人」と呼ぶのです。 我が国では、空也上人が「上人」と呼ばれたはじまりとされていますが、空也上人は市聖とも言われていたように、とくに隠遁の高僧を称して上人と言っていました。 僧位三階で「法橋上人位」が設けられてからは、僧位として天皇から授けられることになり、徳川時代には仏法修行二十年以上に及ぶ者がその資格の対象となりました。 明治六年正月にはこの僧位の制が廃止されましたが、徳行の優れた高僧の尊称として今でも用いられているのです。 上人は日蓮宗・浄土宗・時宗で用いられています。 このほか真言宗では「僧正さん」「院家さん」という呼び方もされています。
ご参考までに・・・。