仏事Q&A
其の九十四


Q. なぜ、寺院には墓地が付きものなのですか?

A. 日本では古くから、死体は汚れたもので、生きている者に祟ると考えられていました。 そのため、有力な豪族の首領などは古墳を造って丁重に葬られましたが、一般民衆の死体は人里離れた山の中などに捨てられていました。 このような風習は長く続き、地方によっては近世に至るまで死体を遺棄していました。 そして、日本古来の風習や思想を重んじる神道でも、死体は汚れたものと見なしてきたのです。 神社にお墓がないのはそのためです。
しかし、仏教が伝来すると、死に対するこのような考え方が一変しました。 仏教には人間は生死を繰り返すという輪廻転生の思想があります。 そして、人間の肉体は地・水・火・風の四つの元素からできています。 死ぬとこの四つの元素は分解されて自然に還るが、時が経つと縁を得て再び集まり、肉体を形成すると考えるのです。 このような思想に立てば、死体は汚れたものでも、祟るものでもありません。 僧侶たちは死体を恐れることなく、淡々と供養しました。
もともと仏教は葬儀を専門にする宗教ではありませんでした。 しかし、実質的に僧侶が葬送に関わるようになったのです。 仏教ではお釈迦様が亡くなったときに、その遺体を荼毘に付し、丁重に葬りました。 つまり、仏教には葬送儀礼のお手本があったのです。 しかし、神道にはそれがありませんでした。 このように、仏教には伝来当初から積極的に死者の供養を行い、ねんごろに菩提を弔いました。 これは当時の日本人にとっては朗報でした。 それまで恐れていた死体を、僧侶が滞りなく、丁重に葬ってくれることで、死体を捨てることに言いようの無い恐怖と後ろめたさを感じていた人々は肩の荷を降ろしたのです。 
以降、人が死んだら僧侶を呼ぶという図式ができあがりました。 そして、寺院の近くに墓地を造り、僧侶が常に読経をして、死者を供養するようになったのです。 仏教が葬儀と深く関わり、寺院に墓地が付きものとなったのは、このためです。 ただし、墓地が普及したのは室町時代頃からのことで、なおかつ一般庶民が墓石を建てるようになったのは、江戸時代の中頃以降のことといわれています。
ご参考までに・・・。