石屋のないしょ話 vol.43

昔から、他所のお家を訪問する時には訪問する者が気を遣い、辞去する時にはその家の者が気を遣うものだと言われています。 今月は、お客様(訪問客)を見送るときのことについてお話します。
もし、あなたが他所様のお家を訪問して辞去するとき、玄関を出てすぐに門灯を消されたり、そのお家の中から笑い声が聞こえたりしたら、どんな気持ちになるでしょう。 せっかく楽しいひと時を過ごしても、これでは台無しになってしまいます。 訪問して下さったお客様がお帰りになるとき、玄関でお別れをすれば外までは出ないのが普通ですが、京都では外で出てお客様が曲がり角を曲がられるまでお見送りをするのです。 部屋の中でお別れの挨拶をし、玄関でもう一度、そして外で、曲がり角で・・・と、何度もお辞儀をしながらお別れをするのです。 最近では一般家庭では少なくなったかもしれませんが、昔からのしきたりを大切にしているお店などでは見られる光景です。 
こんな京都の礼儀作法、これが自然と身につき育った者にとっては、何の疑問も抱かないのですが、他所から来た人には何度も何度もお辞儀を繰り返す京都人を理解してもらえず、こういったところをとらえて京都人はしつこいとか慇懃無礼だと感じるのかもしれません。 しかし、これはせっかくご訪問して下さったお客様に対する礼儀というものであり、楽しかったという余韻を大切に大切にしていることでもあるのです。 そして、またのご訪問をお待ちしていますよという気持ちと心を行為で示しているのです。 「本当に楽しかったです。 ありがとうございました。 またお越しください。」と何度も繰り返して言うよりも、曲がり角まで見送るという京都のこの当たり前が、すべてを表現し物語っているのです。
京都の別れの作法は、再会への序奏でもあると思います。 人との出会い、そして別れ・・・人の一生はその繰り返しかもしれませんが、その時々の人と人との触れ合いを、ただ表面的な形だけにせず、そこにいかに心を込めるかを京都人はずっと以前より考えてきたのではないでしょうか・・・。
石屋のないしょ話でした・・・。